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明暗分けたスクイズ失敗
立ち上がりは先手先手と試合を優位に進めた阪神だが、じわじわと主力メンバーが抜けた弱みが露呈し、逆転されて そのまま押し切られた。
試合前の神宮にショッキングなニュースが舞い込む。浜地真澄投手の新型コロナウイルス陽性判定に伴い、チーム全員がPCR検査を受けた阪神から岩貞・糸原など新たな陽性者が複数人出た事が明らかとなり、念の為の措置を含めて10選手が登録抹消、9人が緊急昇格という大量の入れ替えが行われた。
この事態に東京ヤクルト 先発・高梨に挑む阪神は、糸原に代わる2番に荒木を今季初スタメンで起用する。初回・ニゴロで四球の近本と入れ替わった荒木が盗塁を決め、二死後 4番サンズの完全に詰まった打球の中前適時安打で先制のホームを踏んだ。ジェリー・サンズ外野手が、次のように振り返る。「荒木が良い仕事をしてチャンスを作ってくれたので、返す事を意識したよ。ストレートに詰まらされてしまったけど、振り切る事が出来たから落ちてくれたし、西に先制点をプレゼント出来て良かったね」。
2試合連続完封勝利の阪神先発・西 勇に対する東京ヤクルトは、9試合ぶり1番 坂口。濱田・西浦を5・6番に並べる。初回一死から2番 青木が内角スライダーを引っ張り込んで、ライトポール際へ鮮やかな16号ソロアーチを架けて、すぐに追いついた。この瞬間、西の3試合連続完封は夢と散っている。
2回表 阪神は先頭6番ボーアが、フルカウントからの低め変化球を上手く掬って右中間スタンドへ運ぶ15号ソロ本塁打を放ち、2対1と突き放した。ジャスティン・ボーア内野手は、「打ったのはカーブ。追いつかれてしまった後の先頭打者だから、まずはチャンスを作るためにしっかりコンタクトすることを意識していたよ。結果的にフェンスオーバーすることができて良かったね」と話して、ご機嫌だった。
3回表は二死から糸井の二塁打とサンズ・四球でチャンスを作るも5番 大山が遊飛に倒れる。 4回表には、一死から中二塁打の坂本を置いて、8番 小幡が外角直球を捉えて左中間を破る適時二塁打を放って、阪神が追加点を奪う。「繋ぐ意識で打席に入った。強気に打ちに行った事が良い結果に繋がった」と、 小幡竜平内野手は話している。
早々に失点後は、丁寧な投球で抑えていた西だが、その裏二死から濱田,西浦の連打や盗塁で二死2・3塁とされ、7番エスコバーをスライダーで詰まらせながらも中前へ2点適時安打を運ばれ、3対3と再び追いつかれてしまう。西にとっては不運でもあり、非常に悔いの残る格好の失点だった。
ヤクルト先発・高梨は、5回(87球)まで投げて6安打5三振2四球3失点と大崩れする事なく、自分の仕事を終えている。
雨脚が強くなった6回表 阪神は、ヤクルト2人目・梅野から大山・四球とボーア・左中間二塁打で無死2・3塁とする。ここで7番 坂本の打席で阪神ベンチはスクイズのサインを出すが、坂本は空振り。走者・大山が挟殺され、後続も倒れて勝ち越しに失敗する。プルペンの層が薄くなっている事情もあって、西を出来るだけ引っ張りたいベンチの思惑が焦りを呼んだようにも感じられた作戦。阪神には心理的ダメージが残った。その裏、西は青木・中前安打と村上・四球で一死1・2塁とされ、二死後6番 西浦に三遊間突破の左前適時安打を浴びて、ヤクルトに勝ち越し点を許した。その際、足を滑らせてしまった事もあって、この回限りで降板となる。西 は6回(92球)6安打4三振2四球4失点だった。
阪神プルペンは、今回のコロナ禍で岩貞・馬場・岩崎ら主力メンバーが抜けてしまっている。7回裏 阪神2人目は緊急昇格の能見だが、無死1塁からバスターエンドランを試みた代打・荒木の打球がレフトスタンドへ今季1号2ランとなる。阪神には手痛い1発で、東京ヤクルトが6対3とリードを広げた。8回裏は、阪神3人目・エドワーズが走者を2人出しながらも無失点に凌いでいる。
ヤクルトは終盤必勝リレーで連敗脱出を図る。7回表をマクガフが抑えて、4人目・清水登板の8回表には、二死からボーア・四球と代打・原口の左前安打で1・2塁と走者をためるが、代打・中谷は外角直球に見逃し三振に倒れた。最後は守護神・石山が登板。途中出場・北條には左前安打を許したが、後続を退け、6対3と東京ヤクルトが逆転勝ちを飾った。勝ち投手は6回のピンチを乗り切った梅野につき、ヤクルトは連敗3でストップ。エース西を立てた阪神だが、連敗で巨人との差は12・5差と大きく開いた。(巨人はM26)
「(西は)負け投手にはなってしまったが、一人一人丁寧に投げてくれていたし、チームにリズムを作るような投球をしようとする姿はこちらにも伝わって来ていたので、内容自体は悪くなかったと思う」。先発・西 勇を称えた福原 忍投手コーチは、苦しい台所についても「それはもういるメンバーで頑張ってもらうしかないし、誰がどの回に行くかはなかなか決めることが出来ないけど、今いるメンバーにとっては、どういった形であれチャンスなので、行った選手がしっかり抑えるという形に期待していくしかない」と話していた。
この試合に於ける分水嶺は、6回表のスクイズ失敗にあったように思われる。チームの危機に猛虎ナインからは必死さが十分に伝わって来たが、それが少し空回りしてしまったところもある。コロナ感染は不可抗力とは言え、アクシデントを言い訳に出来ない勝負の厳しさ。当分苦しい状況は変わらないが、今ある戦力を最大限に生かしてシビアに一つ一つ勝利を拾って行く姿勢が求められる。