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球児『最後の名古屋』

覇気のない試合展開で劣勢に立った阪神が、終盤の集中打で1度はひっくり返したものの、最後は守護神が打たれて力尽きた。

左腕対決のナゴヤドーム。中日先発・松葉に対する阪神は、野手では6番 捕手の原口だけが前夜の打線と違うところ。ルーキー井上が一軍デビューから2戦連続7番ライトでスタメン出場を果たす。松葉は初回3者三振と華々しいスタートを切った。

原口と9月21日DeNA戦(甲子園)以来、久々にバッテリーを組む阪神先発・岩田に挑む中日は、6番以下をシエラ・阿部・加藤と変えて来た。岩田は初回先頭・大島の一ゴロを緩慢なベースカバーで内野安打とする。京田・バントの一死2塁から3番アルモンテの右前先制適時安打を井上が後逸するプロ初失策もあって、締まらない立ち上がりとなった(アルモンテは21試合連続安打)。岩田は この後2四球で二死満塁と走者を溜めたが、何とか7番 阿部を外角カーブで見逃し三振に斬っている。

先取点を許した阪神は、2回表一死からボーアが中越え二塁打で出塁するも、6番 原口の左前安打で3塁へ進めない拙い走塁。続く井上は三ゴロ、小幡も中飛で追いつく事が出来ない。その裏 岩田は一死から松葉・内野安打と大島・四球で1・2塁とまたピンチを招くも、京田・中飛。アルモンテも左飛に打ち取り、ここは凌いだ。3回裏にも一死後ボーアの失策で走者を背負った岩田だが、6番シエラを三ゴロ併殺打に仕留めて、ピンチを脱している。

4回表 阪神は大山・ボーアの連打で無死1・2塁と絶好機を作るが、6番 原口はニゴロ併殺打。続く井上も変化球にアジャスト出来ず三ゴロに抑えられた。その裏 岩田が先頭・阿部の中前安打や松葉・左前安打などで一死1・3塁とされると、阪神ベンチは交代を決断。代わった岩貞は1番 大島に右中間適時二塁打を浴びて、中日に追加点を与える。尚も2・3塁のピンチだったが、京田は変化球で空振り三振。アルモンテも三ゴロに打ち取り、何とか最少失点で留めている。(アルモンテは5回表途中、下肢の違和感を訴えて交代)

岩田は3回1/3(74球)5安打2三振3四球2失点だった。「早いイニングで降板となってしまい情けない」。粘りの投球で試合を壊さなかった岩田 稔投手だが、それだけに責任を果たせなかった悔しさがコメントから滲み出ている。

2対0とされて何とかしたい阪神は5回表一死から代打・熊谷と近本の連打で1・2塁とする。2番 糸原は三飛、サンズも浅い左飛に倒れて、チャンスをモノにする事が出来なかった。中日・松葉は5回(78球)を投げ切り、6安打4三振 無四球 無失点と粘りのピッチングで勝利投手の権利を持って、盤石の救援陣へバトンを託した。6回表は2人目・谷元が抑えて、これで6回終了時リードの試合に31連勝中という神話ゾーンへと入って行く。

阪神は5回裏から藤浪が登板。各回先頭打者に四球を与えるも2イニングをゼロに凌ぐ投球を見せた。7回裏は4人目・岩崎が無失点で2点差を保つ。藤浪晋太郎投手が、「調子もあまり良くなかったし、2イニングとも先頭打者を出してしまったが、何とか粘る事が出来た。0点で抑える事が出来て良かった」と胸を撫で下ろす。

中日は7回表を福が、井上・空振り三振を含む3者凡退に抑える。4人目・祖父江が登板した8回表 阪神は一死から糸原・四球とサンズの左中間二塁打で2・3塁とこの試合最大の好機を迎えた。大山は四球を選んで満塁となる。ボーアは緩い一ゴロで辛うじて1点。尚も二死2・3塁で6番 原口が速球に詰まりながらも中前に2点適時安打を放って逆転に成功した。

リードした阪神は、その裏エドワーズを投入。捕手も梅野に代えて逃げ込みを図るが、先頭・シエラにセカンド内野安打を許して、犠打で一死2塁とされる。代打・井領は一ゴロで二死3塁。続く代打・郡司も左飛に打ち取り、窮地を脱した。

9回表は中日・藤嶋に抑え込まれた阪神は、その裏 守護神・スアレスで逃げ込みを図るも一死から京田・四球と途中出場・遠藤の左前安打で1・2塁とされる。ビシエドの二直を守備固めに入った植田が併殺を狙って2塁へ悪送球。二死2・3塁となって5番 高橋の打球は、レフトポール際へ6号逆転3ランとなって消えていった。5対3で勝った中日は5連勝。2位をがっちりとキープしている。ヒーロー高橋周平内野手も「(本塁打の手応えを)覚えてないです」と振り返る程の劇的勝利である。

悪夢のサヨナラ負けを喫した阪神は、今季ナゴヤドーム最終戦を3タテで終え、99試合目にして勝率5割へ逆戻り。それでも初回から攻守に有形無形のミスが数多く見られる中で、ずるずると惨敗を喫する事なく、よく粘って一度は形勢を逆転した事には一定の評価を与えたい。

試合後、この日再登録されて一軍に帰って来た藤川球児投手に中日・荒木雅博内野守備走塁コーチから花束が贈られた。「自分自身が1つ1つの球場での光景と言うのを噛みしめたい!」。今季限りで現役引退を表明している剛腕が、手を振って敵地・名古屋のファンへ別れを告げる姿に、秋がますます深まったような気がした。