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横山‐石崎の同期リレーを藤川が締めて勝利
1点リードの9回表、スタンドが大歓声に包まれた。リンドバーグの登場曲に乗って、藤川の名前がコールされたのだ。
「歓声は聞こえました。後押しになりましたね」
07年から12年まで虎の「絶対的守護神」と呼ばれた。9回のマウンドは“定位置”で、曲に合わせてリリーフカーでグラウンドに出てくるタイミングまで計っていたほどだ。4年ぶりに復帰した古巣では先発ローテーションの一角を担うはずだったが、思うような結果を出せず、5月7日のヤクルト戦を最後にブルペンに回っていた。
14日のDeNA戦は2点ビハインドの8回に登板したが、きょうは1点リードの9回。クローザー経験豊富とはいえ、ブランクのある投手を最も厳しい場面で起用する、思い切ったさい配をベンチは見せた。
「きのうああいう形でやられて、新しいことにチャレンジしないと、というタイミングだった。迷いはあったけど、真っすぐがよくなっていたから。先発は長いイニングを投げないといけないし、球児の良さが出ていなかったかもしれない。この雰囲気だったり、場所だったり、いろんなことを思い出してくれたらいいなと。ストレートで抑えられたことを自信にしてほしい」
現役時代に何度も藤川のボールを受けた矢野作戦兼バッテリーコーチは、起用の意図をそう話した。
150キロを超えるボールはなかったけれど、「火の玉ストレート」と呼ばれたころを思い出させる真っすぐを連発。堂上を空振り三振、亀澤を二ゴロ、代打・野本を中飛に打ち取り、圧巻の3人斬りを見せた。
「夜のほうが速く見えるんじゃないですか。ずっと昼(デーゲーム)に投げてたから」
藤川はそう言って笑ったが、やはり1イニングに全力投球できると違うのだろう。
「みんな(リリーフ陣)が疲れているときのために僕がいるんでね。勝ててよかったです」
試合前、先発の横山と約束をしていたのだと言う。
「いいピッチングをしたら勝てる。後ろは任せろ。大丈夫だから」
守護神・マテオは股関節を痛めていると言われており、セットアッパーのドリスは登板過多ぎみ。苦しい台所事情の中、この藤川の言葉に横山がどれだけ勇気をもらったことか。
「試合前の練習中や食堂で、いろいろと声を掛けてくださいました。球児さんが出てくる瞬間は感動じゃないですけど、鳥肌が立ちました。僕がテレビで見ていた球児さんは抑えで投げていた。登場の瞬間、球場が盛り上がって、偉大なピッチャーが立つべき場所なんだと思いました」
横山は偉大なる先輩の言葉を胸にマウンドに上がり、6回途中3安打1失点で甲子園初勝利を手にした。
序盤から変化球を多投し、緩急を使って抑えたが、投手・山井に投じた真っすぐには手応えを感じたと言う。
「指の掛かりがよくて、スピードガンには表れないキレがあった。ああいうボールを続けられたら、ピッチングの幅が広がるという実感を持てました」
イニング途中で走者を残して降板したのは反省だが、一死一、二塁のピンチは新日鐵住金鹿島からのチームメートであり、14年のドラフト同期入団の石崎がしっかり抑えてくれた。
これまではビハインドか、大きくリードした展開での登板だったが、きょうは2点リードの緊迫した場面。「絶対に負けないという気持ちで、1球1球、腕を振って投げました」という石崎は、ビシエド、ナニータという強力助っ人2人を全球ストレートで打ち取り、続く7回も3人でピシャリと抑えた。
「三振も取れましたし、次につながると思います。きょうだけじゃなくて、継続することが次の課題です」
横山と同様、初めてナマで見たクローザー・藤川に「感動した」と言い、「早く自分もその位置に行けるように頑張りたい」と新たな目標を見つけたようだ。